あれから約4年半、あの悲惨な事故はもう風化してしまったのだろうか。
福岡県内で昨年1年間に発生した飲酒運転事故が337件となり、全国の都道府県で最多となったことが分かった。
3児死亡事故を機に県民を挙げて飲酒運転抑止に取り組み、いったんは半分以下まで減った。ところが一昨年から増加に転じ、昨年はさらに41件も増えた。
もはや、異常事態と言っていい。
目立つのが若年層による飲酒事故の増加である。県警によると、20代は75件と前年より25件増え、全体の20%強を占めた。とくに20代前半(20―24歳)が41件と前年より20件増えており、県警幹部は「3児死亡事故の発生時に運転免許がなく、関心が薄かった世代が運転を始めたことも一因ではないか」と分析する。
飲酒やひき逃げ事故の厳罰化を求める市民団体が「人の命の尊さに思いが至っていない結果」と嘆くのも当然だろう。事態を重視した警察や自治体などでつくる「交通事故をなくす県民運動本部」は今月1日、緊急対策会議を開き、関係者約200人が飲酒運転根絶を誓った。
飲酒運転の厳罰化が進み、警察の取り締まりは強化されている。それにもかかわらず、なぜ飲酒運転は増えるのか。
交通事故に詳しい専門家は「危ないとは分かっていても、酒を飲むと正常な判断ができなくなる。飲酒運転自体、本人が防ごうにも防ぎようのない側面もある」と、その危険性を指摘する。
「酔っていないと思った」「自分だけは大丈夫」。飲酒運転で摘発された運転者から聞かれる言葉が、このことを裏付ける。悲劇が起きた福岡県が飲酒事故全国ワーストとなった事実は、厳罰化や取り締まり強化、啓発だけでは限界があることを示したといえる。では、どうすれば飲酒運転を根絶できるのだろうか。
日本よりも問題が深刻な米国では、飲酒運転を重ねたドライバーに対し、アルコールを検知すると車が動かなくなる装置の設置を義務付けている州もある。
飲酒運転による交通事故死が全体の30%を超えるスウェーデンでは、運転前にドライバーの呼気からアルコール濃度を検知するとエンジンがかからないキーを装着した車両を開発した。日本でも自動車メーカーが研究に取り組んでいる。
折しも、今年4月からは国土交通省の省令改正に伴い、トラックやタクシーなどでアルコール検知器の設置が義務付けられる。運転手は運転前の点検時に、呼気を検知器でチェックしなければならない。これを怠れば、車両の使用停止などの行政処分も科されるという。
事故は被害者だけでなく、加害者や双方の家族の人生も狂わせる。飲酒事故が後を絶たない現状を見る限り、日本でもこうした装置の導入を考えなければならない時期に来ているのかもしれない。