飲酒運転事故で、ドライバーが厳罰を科せられるのは当然のことだ。しかし、事故を起こした車の同乗者が刑事責任を厳しく問われることは極めて少ない。
ところが同乗者には、道交法の飲酒運転同乗罪や刑法の危険運転致死傷ほう助罪などが適用されることがある。上限懲役刑が3年の同乗罪は、罰金刑や執行猶予付き判決が出されることが多い。危険運転致死傷のほう助罪は上限が懲役10年で刑がより重いが、危険運転の認識などを具体的に立証する必要があるため捜査も難しく、起訴自体が珍しいという。
埼玉県熊谷市で3年前、酒酔い運転の男=危険運転致死傷罪で懲役16年確定=が起こした死傷事故の裁判員裁判で、さいたま地裁は、そのほう助罪に問われた男性2人に、それぞれ懲役2年(求刑懲役8年)の実刑判決を言い渡した。
同罪に問われた飲酒運転の同乗者に対する裁判員裁判は全国初だった。
飲酒運転による事故は後を絶たない。福岡県粕屋町では9日深夜、酒気帯び運転の乗用車が男子高校生2人をはねて死亡させている。こうした状況下で、今回の判決は裁判員が市民目線で同乗者の責任をより重く捉えた結果といえる。
判決によると、両被告は男が多量の飲酒をして正常な運転ができないと知りながら乗用車に同乗し、事故直前にドライブを提案されて飲酒運転を了解、黙認した。車は対向車2台と衝突し、夫婦2人を死亡させ4人に重軽傷を負わせた。
被告側は「了解も黙認もしていない」と無罪を主張したが、判決は被告の1人が捜査段階で了解したことを認めた供述調書を「内容は具体的で信用できる」と認定し、その了解で「男が車を走行させる意思をより強固にした」と断じた。
2人は道交法違反(飲酒運転同乗)容疑で書類送検されたが、被害者遺族が危険運転致死傷容疑で告訴した。最終的にほう助罪で起訴されたのは、2006年8月に福岡市東区で幼児3人が犠牲になるなど悲惨な事故が相次ぎ、飲酒運転撲滅の機運が高まっていたからだ。
判決をめぐって、識者の間には「飲酒運転に対する見方が厳しくなってきており、国民感情にも合致しているのではないか」と評価する声がある一方で、「同乗者責任の拡大解釈につながる」と慎重な判断を求める意見もある。
被告の1人が即日控訴したことから、裁判自体はなお続くが、いずれにせよ、今回の判決が同乗者の飲酒運転黙認に強い警告を発したことは間違いない。
とはいえ、厳罰化だけでは飲酒運転の根絶は難しい。酒を飲まないときは危険性を理解していても、酔ってしまえば正常な判断ができなくなるからだ。同乗者が飲酒していれば、なおさらである。
この事故では男が飲酒した飲食店の経営者も道交法違反(酒類提供)の罪で執行猶予付きの有罪判決が確定した。社会全体で「飲んだら乗れない」ような仕組みづくりも、真剣に考えていきたい。