歩行者が酒に酔って道路上に寝てしまうことはままあることですが、それが夜間である場合には、車からの発見、衝突の回避が遅れ、又は発見しても人とは思わずに轢過するなど、事故が発生しやすい。特に、通常路上横臥者の存在が予想されないような幹線道路においては、なおさらです。
この種の事故は、昼間にあっては、右左折等の場合や、先行車に後続していて適宜の車間距離を保たなかったため先行車は避け得たのに避け得なかった等の場合でなければ発生しないが、(発生するとすれば、脇見等の著しい前方不注視か、発見後の著しい運転操作不適切がある場合であろう。)、夜間においては、これと事情を異にし、酔客が予想される場所や、明るい場所を別とすれば、事故発生の危険性は極めて高いであろう。(ある車が回避し得たとしても、交通量の多い道路においては、いずれ事故が発生する蓋然性が高い。)。これが昼夜によって過失相殺率に大幅な差異を設けた理由です。
横臥者のみならず、四つんばいになっている者や、座り込んでいる者も、同様の理由から、本基準が適用されると考えるべきであろう。また、横断歩道上で横臥している者等についても、横断歩行中ではない以上、本基準が適用されることに注意すべきです。
また、路上であっても、歩車道の区別のある道路の車道側端や歩車道の区別のない道路の側端の場合は、態様に応じて【b図】や【c図】、【d図】を適応すべきです。

| 【a】基 本 | 30(1) | |
| 修 正 要 素 | 幹線道路 | + 10 |
| 住宅街・商店街等 | - 5 | |
| 児童・高齢者 | - 10 | |
| 幼児・身体障害者等 | - 20 | |
| 明るいところ | * | |
| 車の著しい過失 | - 10 | |
| 車の重過失 | - 20 | |
| (1)昼間であれば、車からの発見は比較的容易であるから、事故は、車の過失の方が大きいと考えられる。そこで、基本相殺率を30%とした。 | ||

| 【b】基 本 | 20(1) | |
| 修 正 要 素 | 夜間 | + 5 |
| 幹線道路 | + 5(2) | |
| ふらふら歩き | + 10 | |
| 住宅街・商店街等 | - 5 | |
| 児童・高齢者 | - 5 | |
| 幼児・身体障害者等 | - 10 | |
| 集団横断 | - 10 | |
| 車の著しい過失 | - 10 | |
| 車の重過失 | - 20 | |
| (1)車道通行が許されていない場合、歩行者の注意義務は加重されるものと考えられる。 (2)車道上を歩行している場合には横断に比して車両からの発見が容易であり、また、車道側端を歩行していれば容易に衝突を回避できることから、原則として横断中の事故と同様の加算修正をするのは適当ではなく、半分の修正値とした。 | ||

| 【c】基 本 | 0(2) | |
| 修 正 要 素 | 夜間 | * |
| 幹線道路 | * | |
| ふらふら歩き(3) | + 5 | |
| 住宅街・商店街等 | *(4) | |
| 児童・高齢者 | * | |
| 幼児・身体障害者等 | - 5 | |
| 集団横断 | * | |
| 車の著しい過失 | - 5 | |
| 車の重過失 | - 5 | |
| (1)法10条1項ただし書により左側端通行が例外的に許されている場合(右側に崖がある場合、工事箇所があって右側通行が危険な場合、右側に駐車車両が並んでいる場合等)も、本基準が適用される。 (2)歩行者が道路端に沿って歩行しているときは、車において安全な間隔を保ち、又は徐行するなどの注意をすべきであるから原則として車の過失に基づくものと考えられ、修正要素もあまり考慮すべきでない。 (3)予想外のふらふら歩きの場合にはじめて加算修正する。車は、歩行者の側方を通過するときには、歩行者との間に安全な間隔を保ち、または徐行しなければばらないから、予想される程度のふらつきでは加算修正してはならない。 (4)原則として過失相殺をしないことに加え、加算修正される場合も限られることから、減算修正しないこととした。 | ||

| 【d】基 本 | 5(2) | |
| 修 正 要 素 | 夜間 | * |
| 幹線道路 | * | |
| ふらふら歩き | + 5 | |
| 住宅街・商店街等 | * | |
| 児童・高齢者 | - 5 | |
| 幼児・身体障害者等 | - 5 | |
| 集団横断 | - 5 | |
| 車の著しい過失 | - 5 | |
| 車の重過失 | - 10 | |
| (1)歩行者が左側端通行を許されていないにもかかわらず、左側端を通行し、かつ、右側端を通行していたら事故発生を容易に回避し得た場合など、左側端歩行と事故との間に因果関係がある場合を想定している。 (2)左側端を通行している歩行者に過失が認められるとしても、車には、なお、法28条2項の注意義務が課せられているから、原則として車の過失によるものと考えるべきであり、基本相殺率を5%にとどめた。 | ||